純:「普段の生活の中で、自分一人でできるインプロのトレーニングはありますか?」という質問です。
キース:私が思うに、インプロの世界に入って、それを学び始めたら、後戻りはできない。その知識を払い除けることはできない。人を見る見方が変わる。人との関わり方をいつもちょっと調節する。人との関わり方。朝、新聞を買う時に、ちょっとハイステイタスに、あるいはローステイタスになる。映画を観ている時に、何がサークル内のもので、何がサークル外のものかに気づく。この知識を持ったら、あなたは少しずつ、違う種類の生き物になっていく。ほとんどの人がどんどん生気がなくなっていくのに、あなたは歳を重ねるたびに、どんどん生き生きとしていく傾向にある。本当に、とっても元気な年配のインプロバイザーがたくさんいる。それは、インプロをやっているからなのか、最初から活発な人がインプロに興味を持つからなのか、わからないのだけど・・・。でも、確かに、多くの年配のインプロバイザーが、すべてのことに興味を失っていく一般的な年寄りとは、まったく違う。普通は物事を遮断していくのに、インプロバイザーはそうはなっていかないようだ。人との間のキネティックダンスも、気づいているから完璧だし、バス停にいれば、何か小さなストーリーを紡いでいる。時間があったり、退屈していたら、頭の中でインプロし始める。子供がいるなら、彼らとインプロのゲームで遊べる。インプロがあなたを変える。入り込めば入り込むほど、インプロはあなたをもっと変える。人類学や心理学などに興味を持つ。新聞を読めば、シーンを探している。いつもストーリーを探している。人によって異なると思うけど、もし、あなたがインプロに関して真剣ならば、もっともっともっともっと入り込んでいく。おかしなアイデアを考えることに、怖さを感じなくなる。ほとんどの人が、おかしなことを考えるのを怖れている。自分がクレイジーになってしまうと思っているからだ。あなたが狂ってしまうのは、あなたが狂ってしまったからであって、それはあなたが何を考えるかとはまったく関係ない。完全に狂った考えをしていても、完璧に普通でいることができる。狂ってしまうのは、化学的作用で生化学的な影響が起きるんだと思う。あなたの脳がおかしくなって、あなたはクレイジーになる。でも、クレイジーなアイデアを考えていたからではない。たいていの新聞の漫画はクレイジーだ。それらは禁じられている思考、クレイジーな思考だ。だから、人々が自分のマインドの中にあるものを怖れているのは、残念で気の毒なことだと私は思う。もし、あなたがアーティストなら、自分のマインドの中にあるものを怖れてはいけない。イマジネーションは際限がないわけで、あなたに見せないものは何もないのだから・・・。あなたはアーティストになっていく。インプロバイザーはアーティストと同じだ。
純:僕はまったくそうなった。
キース:ある批評家が、シラーというドイツの有名な詩人であり脚本家でもある友人に手紙を書いた。「私たちは一緒に育った。私はキミを良く知っている。私たちは友達だ。私は批評家だ。私はキミと同じぐらい知性的だと思う。私はキミと同じぐらいいいセンスを持っていると思う。なのに、なぜ、私は批評家で、キミは詩人であり、脚本家なんだ? なんでだ? 何が違うんだ? 私はキミと同じぐらい知的だ。なぜ私は批評家なんだ?」。これに答えた手紙が、フロイトに影響を与えたんだ。ジークムント・フロイトはこの手紙を知っていた。これがフロイトに「検閲」について、「無意識のゲート」「潜在意識」について話させた。それは、このシラーの手紙から生まれたんだ。「キミと僕の違いは、キミには意識の街に入るところにゲートがあって、門番が立ってるんだよ。そして、アイデアが現れると、書類を要求する。ビザはあるのか? 街に入る許可はあるのか? でも、僕には意識のゲートに門番はいない。どんなものでも中に入れちゃうし、それで、役に立ちそうもないものが、ちょうど私に必要なものだったりする。でも、キミは閉ざしちゃうんだ」。これは正しい。私はなんでも中に入れちゃうし、それはインプロバイザーの考え方と似ている。あなたは戻ることができない。あなたがインプロを学んだら、違う種類の人になって、そこから離れられない。そして、インプロバイザーでいる方が、うんと楽しい。
クリス:絶対。
キース:そして、一生、学ぶことをやめない。
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